副業は就業規則で禁止できる?確認方法と会社が制限できる4つの範囲

就業規則による副業禁止の有効性や企業が制限を認められる4つの正当事由を分かりやすく整理した記事の導入を伝えるビジュアル。
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副業を始めてよいかどうかは、法令の一般論だけで決まるものではありません。
最初に取り組むべきなのは、自身が勤務先と結んでいる労働契約の内容と、就業規則の具体的な文言を確認することです。
法律上、会社員の副業を一律に禁じる規定はありません。裁判例や厚生労働省のガイドラインにおいても、勤務時間外の時間は原則として労働者の自由とされています。
一方で、自社の就業規則を無視して無断で副業を始めると、本業の雇用関係や信頼関係を損なうリスクが生じます。

この記事では、自社の就業規則を正しく確認する手順、会社が法的に副業を制限できる正当な理由、届出制と許可制の実務上の違い、そして始める前に整えておくべき時間・健康・税務の判断基準を解説します。

目次

この記事の結論

  • 副業そのものを法律が一律に禁止しているわけではなく、勤務時間外の活動は原則として労働者の自由です。
  • 厚生労働省のモデル就業規則(令和7年12月版)第70条では「届出制による原則容認」が標準とされています。
  • 労務提供上の支障、秘密漏洩、信用毀損、競業の4事由に該当する場合は、会社による禁止や制限が法的に認められやすい傾向があります。
  • 形式的な無断副業だけで直ちに重い懲戒解雇が有効となるわけではありませんが、本業の信頼を維持するためには事前の規則確認と届出が不可欠です。
  • 雇用契約による副業は労働時間が通算されるため、過重労働の回避と所得区分に応じた税務確認を事前に行う必要があります。

就業規則における副業規定の原則と法的位置づけ

法律上、労働者が勤務時間外にどのような活動を行うかは基本的に個人の自由と解されています。
厚生労働省は「働き方改革実行計画」を受け、平成30年(2018年)1月に「副業・兼業の促進に関するガイドライン」を策定しました。その後、令和2年(2020年)9月および令和4年(2022年)7月に改定が行われ、現在では裁判例を踏まえて「原則として副業・兼業を認める方向が適当である」と明記されています(出典:厚生労働省 副業・兼業の促進に関するガイドライン(令和4年7月改定))。一律に禁止や許可制としている企業に対しては、業務上の支障があるかを精査し、原則容認へ向けた見直しを促す方針が示されています。

国の基準となる厚生労働省の「モデル就業規則」(令和7年12月版)においても、第14章第70条に副業・兼業の規定が置かれています(出典:厚生労働省 モデル就業規則(令和7年12月版))。なお、同省の施策紹介ページ等では過去の版の条番号である第68条と記載されている箇所がありますが、現行の本文ファイルでは第70条が該当条文です。

モデル就業規則第70条の骨格は次のとおりです。

  • 労働者は、勤務時間外において、他の会社等の業務に従事することができる。
  • 労働者は、事前に会社へ所定の届出を行うものとする。
  • 会社は、届出内容が一定の例外事由に該当する場合に限り、副業を禁止または制限することができる。

企業の現場においても、副業を容認する動きは広がっています。株式会社パーソル総合研究所が2025年8月に実施した「第四回 副業の実態・意識に関する定量調査」(全国の正社員・人事担当者等対象、企業n=1,500、有業者n=62,320)によると、企業の副業容認率は64.3%、正社員の副業実施率は11.0%となり、いずれも調査開始以来の最高値を記録しています(出典:パーソル総合研究所 第四回 副業の実態・意識に関する定量調査(2025年10月公表))。また、株式会社インディードリクルートパートナーズの「兼業・副業に関する動向調査2024」(2025年1月調査)でも、副業を認める人事制度がある企業は60.7%に達しています(出典:インディードリクルートパートナーズ 兼業・副業に関する動向調査2024(2025年5月公表))。

世の中の潮流として副業容認が進んでいるとはいえ、個々の労働契約においては勤務先の規則が基準となります。

会社が副業を制限できる4つの正当事由

裁判例および厚生労働省のガイドラインにおいて、会社が副業を禁止または制限できる正当な理由として整理されているのは、主に次の4つの類型です(出典:厚生労働省 副業・兼業の促進に関するガイドライン(令和4年7月改定))。

1. 労務提供上の支障がある場合

副業による疲労や睡眠不足で遅刻・欠勤・ミスが増加するなど、本業の業務に具体的な悪影響が出るケースです。
建設会社の従業員が毎晩約6時間にわたりキャバレーで無断就労していた事案(小川建設事件、東京地決昭和57年11月19日)では、余暇利用の域を超えており本業への労務提供に支障を来す蓋然性が高いとして、会社側の解雇が有効と判断されました。また、タクシー運転手が非番日にアルバイトに従事した事案(都タクシー事件、広島地裁昭和59年12月18日)でも、運転業務における休養の必要性から兼業制限が肯定されています。

2. 企業秘密が漏洩する場合

本業で知り得た顧客情報、技術情報、未公開企画、ソースコード、ノウハウなどを副業先で利用または漏洩させるおそれがあるケースです。
同業他社の取締役に就任した事案(橋元運輸事件、名古屋地判昭和47年4月28日)では、現実に本業の労務提供へ重大な支障が生じていなくとも、秘密漏洩の危険性や企業秩序維持の観点から懲戒解雇が有効とされています。

3. 会社の名誉・信用を損なう、または信頼関係を破壊する場合

違法な事業への関与、公序良俗に反する活動、勤務先の名称を無断利用した営業、虚偽の申告などによって、会社の社会的信用を傷つけるケースです。
信頼関係の破壊については業種や職務の性質によっても評価が分かれるため、業務内容を客観的に説明できるかどうかが重要な判断軸となります。

4. 競業により企業の利益を害する場合

在職中の労働者は、使用者と競合する事業を行って不当な損害を与えない誠実義務(競業避止義務)を負うと一般に解されています。
ただし、ガイドラインでは同一の業種・職種であっても、顧客層や取り扱う商品が異なり会社の正当な利益を害さない場合には、副業を認める方向で検討することが望ましいとされています。単に業界が近いという理由だけで判断せず、取引先や業務領域の重複を精査することが求められます。

これら4つの事由に該当しない短時間の活動や、本業と全く関連のない独立した創作活動などについては、制限する法的な合理性を欠くと判断されやすい傾向にあります。

状況別にみる就業規則の確認と運用

就業規則の定め方や副業の契約形態によって、求められる対応や法的留意点は異なります。

項目届出制(標準モデル)許可制一律禁止規定
会社の基本姿勢原則容認(事前把握)審査・承認を前提原則不可
会社の制限権限4事由該当時のみ制限可裁量はあるが恣意的拒否は無効リスク全面禁止は効力が争われやすい
従業員の義務所定事項の事前の届出申請と許可の取得現行ルールの確認と個別相談
違反時のリスク届出手続きの懈怠指導不許可事由の実質により判断形式違反でも実質支障なければ重懲戒は困難

届出制と許可制の違い

厚生労働省のモデル就業規則が採用しているのは届出制です。会社は業務内容や労働時間を事前に把握し、4事由に抵触する場合にのみ禁止や制限を行います。
許可制を採用している企業も依然として多く存在し、許可制そのものが直ちに違法とされるわけではありません。しかし、マンナ運輸事件(京都地判平成24年7月13日)では、正当な理由がないにもかかわらず会社がアルバイトの許可申請を拒絶したことについて、不法行為に基づく損害賠償請求(慰謝料)が認められました。許可制であっても、会社側は合理的な理由なく恣意的に不許可にしてはならないと解されています。

無断副業と懲戒処分の関係

就業規則に反して無断で副業を行った場合、形式的には服務規律違反となり得ます。
ただし、労働契約法第15条により、客観的に合理的な理由を欠き社会通念上相当と認められない懲戒処分は、権利の濫用として無効となります。私立大学の教授が無許可で語学学校の講師等を務めていた事案(東京都私立大学教授事件、東京地判平成20年12月5日)では、兼職は本来私生活上の行為であり、職場秩序に格別の悪影響を与えていないことから懲戒解雇が無効と判断されました。また、運送会社の運転手が年に1〜2回貨物運送のアルバイトをした事案(十和田運輸事件、東京地判平成13年6月5日)でも、具体的な労務支障がないとして解雇が無効とされています。

このように、形式的な無断副業だけで即座に解雇等の重い処分が有効となる可能性は低いといえます。しかし、社内での評価や人間関係が悪化するリスクは残るため、秘密裏に進めることは推奨されません。

なお、本業の所定労働時間内に副業の連絡業務や作業を行う行為は、時間外の副業問題とは異なり、職務専念義務違反として正当な処分の対象となり得ます。在宅勤務中であっても、本業の勤務時間中は職務に専念しなければなりません。

副業を始める前の実務確認手順

副業を具体化させる際は、トラブルを未然に防ぐために段階的な確認を進める必要があります。

  1. 就業規則の現物を確認する
    常時10人以上の労働者を使用する事業場には就業規則の作成・届出義務があります(労働基準法第89条)。また、就業規則は社内掲示、書面交付、電磁的記録での常時閲覧などにより労働者に周知されて初めて効力を持ちます(労働基準法第106条)。社内イントラネットや従業員ハンドブックで「副業」「兼業」「二重就職」「他の会社」「許可なく」といった単語を検索し、本文にない場合は別規程(副業規程、服務規程等)の有無を確認します。
  2. 副業内容を1枚のシートに整理する
    副業先の事業内容、具体的な担当業務、契約形態(雇用・業務委託・請負)、就労日時、想定稼働時間を書き出します。本業の顧客・機密情報・ブランドを一切利用しない点も明確にします。副業先との間で守秘義務を負っている機密情報まで勤務先に開示する必要はありません。
  3. 4つの禁止事由に抵触しないか自己点検する
    本業の所定外労働を含めたスケジュールを確認し、睡眠不足や疲労蓄積を招かないか、競業や秘密漏洩の懸念がないかを客観的に精査します。
  4. 会社の規程に沿って届出を行う
    社内の所定様式に従って申請します。社内に専用様式が用意されていない場合は、厚生労働省のウェブサイトで公開されている届出様式例を参考に必要事項を記載して提出すると、手続きが円滑に進みます。

注意点と向かないケース

副業を安定して継続するためには、時間管理、健康確保、税務上の義務について正しい知識を持っておく必要があります。

労働時間の通算ルール

副業先でも雇用契約(パート・アルバイト等)を結ぶ場合、労働基準法第38条第1項により、異なる事業主間であっても労働時間が通算されます(昭和23年5月14日基発第769号)。通算して法定労働時間(原則1日8時間、週40時間)を超える部分については、後から契約を結んだ事業主に割増賃金の支払い義務が生じる場合があります。
一方、フリーランス、業務委託、請負、個人事業主としての活動は、労働基準法の労働時間規制が適用されないため、法律上の通算対象外となります。

過重労働と健康リスク

法律上の時間通算の対象外であっても、身体にかかる総負荷は変わりません。
前述のパーソル総合研究所の調査(2025年10月公表)では、副業によって「過重労働となり仕事に支障をきたした」「体調を崩した」と回答した個人が26.9%に達し、過去最高水準となっています。また、雇用型副業者の約3割で本業の残業と副業の合計が月45時間以上となっており、その半数以上が本業側に副業の事実を申告していませんでした。さらに、大阪高判令和4年10月14日(大器キャリアキャスティングほか事件)では、労働者の兼業による連続した長時間労働を認識し得た本業側に対し、安全配慮義務違反が認められています(労働者側の自己責任も過失相殺4割として考慮)。

本業の残業が多い人、睡眠時間を削らなければ作業時間を確保できない人、自己管理が苦手な人は、無理な副業の開始を見送るべきです。

所得税と住民税の確認

給与を1か所から受けており源泉徴収されている会社員の場合、副業による各種所得(給与所得・退職所得を除く)の合計額が年間20万円を超えると、所得税の確定申告が必要になります(出典:国税庁 タックスアンサー No.1900 給与所得者で確定申告が必要な人)。副業でアルバイトなど給与所得を得ている場合は計算基準が異なります。
ここでいう基準は「売上(収入)」ではなく、売上から必要経費を差し引いた「所得」である点に注意が必要です。また、所得税の確定申告が不要となる年間20万円以下の所得であっても、市区町村に対する住民税の申告は別途必要となります。

住民税の特別徴収税額の通知をきっかけに副業が把握されるケースは実務上多く見られますが、発覚を隠す小手先の対策に終始するのではなく、事前に就業規則を確認し正当な届出を行っておくことが本業の雇用を守る最善の防衛策です。

まとめ

副業は、収入の複線化や新しいスキルの獲得を通じて自身の選択肢を広げる有効な手段です。しかし、その前提となる本業の雇用関係や自身の健康を損なってしまっては本末転倒です。
就業規則の文言を一人で抱え込んで判断する前に、まずは社内規程の閲覧方法を担当窓口へ確認し、客観的な自社のルールを正確に把握することから始めてください。

参考資料・出典

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この記事を書いた人

人事系コンサルタントとして20年、企業組織の課題解決や個人のキャリア構築に携わる。個人投資家としても20年の経験を持ち、ファイナンシャル・プランナー(FP)、知的財産管理技能士の資格を保有。
ライフアセットラボでは、「会社に依存しない個人の自立」を支援する情報を発信。人事コンサルティングで培った分析力と、投資経験による長期的な視点を生かし、副業、キャリア、資産形成、健康を人生の資産として捉え、多面的に考察します。一次情報と実体験を重視し、メリットだけでなく注意点も含め、読者が自分に合った選択を冷静に判断できる情報提供を目指しています。

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